大本営が震えた日 (新潮文庫)



大本営が震えた日 (新潮文庫)
大本営が震えた日 (新潮文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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学校教育から開放される書

 私が中学生だった頃、あの戦争に関して教えられた事といえば、日本は周辺国の
侵略を企て、近隣諸国の多くの人々を殺め、苦しめた「悪」であった、その元凶は
暴走した軍部であり、その罪はどの様に償っても償いきれないものだ。日本人は過
去の罪を認識し永遠に忘れてはならない。といったところでしょうか。それ以外
戦争について教師たちは言葉にするのも汚らわしいとばかりに多くを語りませんでした。

 そんな学校教育から開放されて、それと同じくらいの月日が経過しました。
最近あの戦争は何だったのか?という疑問をやっと感じるようになることができる
ようになりました。中学校当時読んだだけで自分が穢れてしまうのではないかとい
う呪縛から開放されたような気がします。幸い日本は戦後の貴重な検証が数百円の
文庫本でそれに触れることができる先進的な文化を有する国でした。

 本作は、昭和16年12月1日皇居内東一のまで開かれた御前会議において、12月8日
対英米蘭開戦の断を天皇が下してから先端を開くに至るまでの1週間、陸空海軍第
一線部隊の極秘行動のすべてを、事実に基づいて再現してみせた作品です。作者の
目は静かでこの種の素材につきまといがちな感傷と批判を抑制し、事実によってす
べてを語っています。読後感はむなしさと徒労感が重くのしかかってきますがその
判断はあくまで読者に委ねられています。

 あの戦争に関して私たちは統一見解など持つ必要はなく、各自が事実を踏まえ
それに向き合って隣国の人々と関わっていけばいいのだと、本作を読み気付かされました。
事実はひとつ、しかしそれはどう捉えるかは各人の判断に任せる。この一見単純な
事が許されている日本に住んでいることの幸福を感じる一作でした。

開戦前

日本が、真珠湾やマレー半島に奇襲作戦をするために、綿密に計画を立てて、息をのんで進んでいく様子が描かれています。開戦意図を秘匿するための軍部の涙ぐましい工作が書かれていて、そのために、兵士の命を犠牲にして構わないという姿勢がわかります。綱渡りのような作戦に歴史を感じます。それにしても、このエネルギーが戦争回避への道につながらないのが、人間の業なのかもしれません。開戦前の軍部の様子を描いたユニークな本だと思います。
太平洋戦争開戦直前の秘話の数々

太平洋戦争の開戦というと真珠湾攻撃だけがクローズアップされがちだが、
同時に行われた東南アジア方面での陸軍の奇襲作戦の詳細も描かれている。
あの大戦争をそんな危うい状況下で見切り発車的に始めたのかと驚かされる。
綿密な計画のようでいてその大前提の部分が非常に不安定という、砂上に楼閣を築くような作戦は、
敗戦という結果を知っている現代人の目で見ると、
最初から運命づけられた敗戦へのスタートでしかなかったように思える。
最初のエピソードである指令書紛失事件は、まるで戦争アクション映画のストーリーみたいだ。
歴史の裏側

十二月八日の奇襲攻撃命令の暗号書が積まれた旅客機が、
敵地中国に墜落するという緊迫した状況からこの物語は始まる。

太平洋戦争の時代背景は、勉強不足ゆえにあまり知らない。
奇襲攻撃はハワイ真珠湾のみならず、マレー半島上陸作戦なるものもあった事を知った。
暗号書の行方、真珠湾、マレー半島の三つの軸が折り重なり、展開していく。

物語は、相変わらず淡々と進んでいきますが、
吉村氏の着眼点のセンスの良さには、改めて感嘆しました。
単なるドキュメンタリィというだけではなく資料的価値もあり

 時は真珠湾攻撃直前、高級将校・杉坂少佐と重要暗号書類を載せた双発機「上海号」が行方不明になったとの一報に大本営は蜂の巣を突いた様な騒ぎになる。杉坂少佐の持つ暗号書類が敵軍の手にわたると真珠湾攻撃作戦そのものがおじゃんになってしまうかもしれないからだ。
 前半はそれについての話が淡々と、しかしどこか切迫した描き方で進み、後半は真珠湾攻撃時のこぼれ話といった感じである。
 相変わらず、どうやって調べたのかと思う様な詳細なデータがずらりと並んでおり思わず唸らされたが、欲を言えば時系列や「上海号」墜落地点周辺の地図も載せて欲しかった。



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